先月の終わりに「私たちは自分の人生の消費者になりつつある」と書きましたが、このようにして建築は使い捨て商品に変わり、バブル時代の始まりまでには完成しました。グローバルな資本が流入し、新たな富が不動産価格の上昇を約束し、土地が建物よりも価値あるものになるという市場の舞台ができあがりました。このような日本のスクラップ・アンド・ビルドの概念は「創造的破壊」の哲学をも生み出しました。資金の流入はより大きな価値を創造し、より少ない土地で、より高層に建てようとする人為的な需要を後押ししました [1]。戦後の都市成長は、この建築ブームと手を携えて発展し、多くの住宅建設業者が低価格で低品質の木造住宅を可能な限り多く建設するようになりました [2][3]。これには、海外からの国内市場への介入を食い止めようとした国産産業による意図的な意識操作もあったのです。 そもそも「古い」住宅を粗悪品とする偏見はありましたが、実際、大正時代の典型的な木造住宅は、最高の品質と一貫性を持っていました。それは、規制された林業、高度に規格化された製品、そして熟練した大工が合流して生まれた、江戸時代を凌駕する木材建築の神髄だったのです。(この点については、残念ながら現在は当てはまりませんが [4])。
木造建築への偏見に対する根本的な原因は、第二次世界大戦末期に現れた建築の消費方法のシフトに見いだせます。アメリカではヨーロッパからの兵士の帰還により住宅需要が急増し、住宅産業は急成長を遂げました。ここが、シアーズに代表される注文住宅のピークでした。郊外の標準的な住宅は建築家の必要性を超越し、建築の基本単位である住宅を商品化したのでした。「レヴィットタウン」と呼ばれるモデルは、30年ローンや分割払いなどのニューディール政策によって可能となり、新たな消費者志向の中産階級を育成しました [5]。
上記のアメリカのシステムは、戦災に見舞われたヨーロッパや日本の国家再建のために、そのメティエと資本を移転させて、お金になる輸出品の一つとなりました。この「パックス・アメリカーナ」や「アメリカーノワイズリー」というブランドは、戦争で破壊された国々の復興のために繁栄していくことになりました。GHQ とアメリカ占領軍は、この世界の片隅に民主主義の拠点を築くという理想と願望に基づいて、日本を再構築したかったのです。しかし、そこには不安定なパラドックスがありました。他国を自分たちの相対的なクローンとして再構築しようとする一方で、資本投下には消極的だったのです。越澤 明氏によれば [6]、GHQの「ドッジ・ライン」政策は、日本を再建しようとしながら、緊縮財政を実施しました [7]。このようにアメリカのシステムは [8]、明確ではありますが、実現可能性に欠けたものでもありました。この中途半端さが、ときとして制度の隙間をくぐり抜けた即興行為、改造、つまりよくも悪くも再解釈の余白を残していたのです。日本というシャーレの中で孵化したこの再流用は、農耕地の風景から新しい郊外、サテライト・シティ、新しいベッドタウン・コミュニティといったものが生まれました。そして、既存の近隣都市は東京と物理的に融合し、首都圏というメガ・ポリスまで成長するという、突然変異を起こしました。
これは、建築の本質を根本的に変えた肥大化の現れでした。前世紀後半のグローバリゼーションと資本主義の力は、建築を消費の対象へと変容させました。 賞味期限のある生鮮品のように理解されています - 今ここにあるものが、消費されて明日にはなくなってしまうのです。建築の消費対象としての性質が高まった戦後、急速に求められるようになったのは、価値のある実空間ではなく、いわゆる「マイホームパパ」的な、あくまでイメージの中の成功者としての空間です。短命の時間性を覆い隠すことで、本質的な価値を生み出しているものが何なのか、わかりにくくなってしまいました。まるでチューインガムのように、存在するのは味だけで、そこから栄養を得ることはできません。バブルガム建築は、持続不可能で、空虚で、一瞬の味わいはありますが、カロリーはないのです。
トウキョウイズムは、この不完全な都市から始まる不完全なマニフェストの探求として、今後も、一つずつテーマを取り上げます。分析や議論を通して、日和見主義的にではありますが、理論化していきます。探求したい現象のリストは山ほどありますが、これを皆さんと一緒に共有する体験としていきたいと思っています。もしよろしければ、以下の三つの中から一つのトピックをお選びください。5月号でその題材を掘り下げたいと思います。4月号は、ゲストによるコラムをお送りします。
Topic 01:二つのオリンピックミラージュ
Topic 02:「創造的破壊」の謎解き
Topic 03:スパイラルランドスケープ
お忙しいなかお付き合いいただき、どうもありがとうございました。では、また次回!
執筆(英文):カズ・ヨネダ&グレッグ・セルヴェータ
編集:角尾 舞
参考
[3] 建築基準法改正の一部を改正する法律案(平成10年3月17日提出)「準防火地域内の木造建築物の緩和」(話題提供:ジョンパウルズ・麓英彦, カナダ林産業審議会)
[4] 坂本忠規氏(公益財団法人竹中大工道具館・主任研究員)へのインタビュー 於:竹中大工道具館 2015年4月8日