Bureau 0-1は、人類の平等や自由に向けて、平和的な改革を進める人々と共にあります。私たちも、ある種のマイノリティな背景をもつデザインオフィスです。だからこそ、より良い世界に向けての共通の関心とビジョンを抱いています。 世界中で進行するBlack Lives Matter(BLM)デモと、LGBTプライド月間の合流地点だった6月。さまざまな行為が、道路や公園などのいわゆる公共の場でも表出しました。今月は、デザインと公共空間の役割について考えたいと思います。
いま、人々が必要としている「公共空間」はどのようなものでしょうか?新型コロナウイルス以降、公共空間の考え方は大きく変わりました。しかしそもそも、「公共」と言われている場所が本当の意味で公益の場であったかは、歴史を振り返ると矛盾する点も見えてきます。つまり、BLMと公共空間が無関係でないことも、お気づきかと思います。
現地時間の6月5日、ワシントンのホワイトハウス近くの道路に、Black Lives Matterの巨大な黄色い文字が1日で描かれました。ワシントンD.Cの市長であるミュリエル・バウザー氏が、地元の人々に依頼したものです。このための資金は、壁画を扱うパブリックアートの財団から捻出されたと言われています。その後も、連邦政府当局者が催涙スプレー等を使用して抗議者を排除した広場を、Black Lives Matter Plazaと名付けました。
これらの行為は、市長によるステートメントであり、同時に(ある意味では権力を利用した)都市空間のハッキングとも言えます。都市と建築空間を考えるうえで、公共性は常にテーマになりますが、BLMの問題と都市空間を結びつけた今回の市長の行為は、その意味でも論点となるでしょう。政治やイデオロギーが交錯する問題ではありますが、あくまでBureau 0-1 はこの運動を支持します。いま考えるべき根深い問題を取り上げ、人々の自由と権利を合法的で、平和的に、そして何よりクリエイティブに主張しているからです。デモとは、抗議することであり、本来暴動を指したり暴力を肯定するものではありません。
個人的な話になってしまいますが、Bureau 0-1の代表であるカズ・ヨネダは、アメリカの西海岸で生まれ育ちました。いわゆるマイノリティとして育ち、ときに偏見も受けました。しかし同時に、大学教育を受けられたことは(もちろん建築への情熱や努力はあったものの)、アファーマティブ・アクション(マイノリティを積極的に採用するという取り組み)のおかげでもあったと認めています。
日本へ移住を決めたとき、このような偏見はすべて、アメリカに置いて来られると思っていました。でも、少し違いました。日本人の外見で、日本語を話しはしますが、ときどき、いまだに見えない壁を感じることはあります。日本という国に、偏見が全くないわけではありませんでした。コロナウイルスだけでなく、世界中どこでも起こりうる、人類共通の問題でもあるのです。私たちも、クリエイティブに自由を表現する、パブリックな場にもこれから携わっていきたいと考えています。
幾度となく、人々は不可侵の権利のために立ち上がってきました。そしていままた、戦っています。私たちがこの社会に真正面から向き合い、目の前の事実を現実を認めることができたとき、初めて解決策を見つけるための議論が始められるのではないでしょうか。今度こそ、世界は変わるときを迎えています。